2017年2月某日、とあるきっかけで4人のアイアンマン完走者を紹介して頂き、インタビューすることができました。その時の様子を全2回に分けてレポートします。
今回の【前半】はアイアンマン出場の経緯やトレーニング、熱い想いを。
第2回目の【後半】はロードバイクサイトらしく、アイアンマンで使ったバイクの機材について触れて行こうと思います。
今回、インタビューに協力頂いたのはコチラの4名。顔出しOK頂いたので写真を掲載します。
左から高柳さん(GIANT) / 中村さん(TREK) / 齊藤さん(スペシャライズド) / 濵田さん(SCOTT)。
彼らが出場したのは2014年に開催されたアイアンマンジャパン北海道2014。当時の写真もいくつか頂いたので、併せて掲載していきます。
皆さん私と同じく1986年うまれ。2017年2月現在30歳。アイアンマンジャパン北海道2014出場時は26と27歳でした。
アイアンマンとは?
アイアンマンと言えば、手からビームを出すアベンジャーズなヤツ・・・
違う、そっちじゃない。
↓今回はコッチ↓
まずはアイアンマンというドMの真骨頂レースを知らない方のために、そもそもどういったものなかを簡単に説明します。
究極のトライアスロンレース
アイアンマンとは究極のトライアスロンレース。
- スイム3.8km
- ロードバイク 180km
- ラン 42km
の合計約226kmを制限時間17時間のうちに走り切るという究極のレース。
バイク180kmだけでもツールド沖縄最長コース並みなのに、それに加えてスイム3.8kmとフルマラソン42kmです。
・・・それに加えてスイム3.8kmとフルマラソン42kmです。(大事な事なので2回)
まさに変態的なまでに肉体の極限を追求した超ロングディスタンスレースである。自分の限界を突破したいドMの極み。
それでいて完走率(対エントリー比)は70~75%前後という結構タフな参加者たちである。
ちなみにアイアンマンレースは世界39か国で開催されています。
北海道は2014年と2015年の2回開催のみです。コース事情によりそれ以降は開催されていませんが、今、アイアンマンジャパン北海道再開に向けての動きがあるとか無いとか。
普通の人でもアイアンマンになれる!!
ここで注目したいのは
「彼らは至って普通の20代社会人だった」
という事です。齊藤さん、濵田さん、高柳さんは会社員。中村さんは消防士です。
↓当時のフィニッシュ写真↓
20代半ばのバリバリ忙しい社会人。金融系で営業色の強い3人と、緊急事態に備えなければならない現役消防士。もちろん朝から晩まで平日は仕事。
特に齊藤さん
「アイアンマン出場者の中で俺が一番トレーニングしてない自信がある(笑)。平日は全くトレーニングしてなかった。」と豪語する程。
「さすがの俺もアイアンマン3ヵ月前は毎週末はトレーニングしてたけどね!」(当たり前かっ!)
「ほんとアイアンマンに出てる人に失礼なくらいのトレーニングしかできてない(笑)。え?ハーフマラソンレベルのトレーニングです。」
そんな時間も金もなかった20代半ばの彼らがアイアンマンに出場したのは、半ば「ノリ」だったそうです。
アイアンマン出場選手の中で20代の参加者は全体の1割程度。
アイアンマンは出場する事自体にも結構お金がかかります。(参加費8万円。そのほか宿泊やら移動やら何やらで合計1人20万円くらい)
もちろんバイクやウェアなどの装備にもお金がかかります。
当然仕事の合間を縫ってのトレーニングなど、時間的な制約も。
そんな金なし時間なしの「普通の」20代半ば社会人でもアイアンマンになれることを彼らは身をもって証明したのです。
独学トレーニングを重ね・・・
アイアンマンの出場条件には
「トライアスロン オリンピックディスタンス(スイム1.5km・バイク40km・ラン10km)を完走した経験がある人」
というのがあります。彼らはその条件はクリア済み。
トライアスロンやアイアンマンに向けてのトレーニングは彼らの独自トレーニングです。
特に印象に残ったのは、週末に4人で行った合宿練習。
合宿場所は千葉県の館山。
毎回彼らが拠点としていた民宿はコチラの「民宿かやま」という民宿。
出典:http://tateyama-kayama.com
民宿の方も彼らがトライアスロンの練習で合宿に来ていると知っていたので、料理も増し増しだったとか。めっちゃおすすめだそうなので、紹介させて頂きます。千葉の南房総を拠点に合宿トレーニングを考えている方は利用してみてはいかがでしょう。
→ご予約はコチラ
朝食前の30分ラン
ヒルクライム60km
砂浜ダッシュ
・・・などなど彼ら独自で考え出したメニューを皆でこなしていったとか。
楽しそうだなぁ。
最初は本当に泳げなかった
トレーニングの話を聞く中で最も驚いたのは高柳さんのスイム事情。
彼はトライアスロンを始める前は本当に10mくらいしか泳げなかったとの事。
そこから水泳の練習を重ね10m→50m→100m→1000m→2000m→4000mと徐々にスイム距離を伸ばしていったそうです。
まさに継続と積み重ねと根性。
何とかなるでしょ→トラブル・パニック
アイアンマン前日、会場入りした彼らは初っ端何と六角レンチを忘れてバイクが組み立てられないというトラブルに(笑)
「大丈夫かこいつら?」と思われながら、周りの参加者に六角レンチを借りてバイクを組み立て、なんとか出場できる状態に。
しかも組み立てに慣れてなくて、なかなか組み上がらない。
当日、何を準備してよいかパニくる齊藤さん↓
齊藤さん:
「こんなバイク機材の知識が乏しい僕でも完走できました(笑)」
お・・おうっ。
補給食準備してない
「何とかなるでしょ」
というノリで、バイク180kmの補給食をほとんど携帯していなかった彼ら。
(マジか)
バイクやランの途中は、大会側が用意した「エイド」と呼ばれる場所でバナナやオレンジなどのボランティア補給食があるはずでしたが、何と、そこまでたどり着くと、全部前走者に持っていかれており、補給食が全くない状態。彼らの中では大きく想定外の事態(!?
唯一齊藤さんが持っていたアンパンを分け合って、何とか補給を繋ぎとめる。
中村さん:
「途中死ぬかと思ったど、齊藤さんがもっていたアンパンに救われました(笑)あははー。」
あははー・・お・・・おうっ。
シフトが壊れる
バイクゾーンでのトラブルは尽きません。
高柳さんはバイク55km地点でリアのシフトが壊れる!というかなりヤバい機材トラブルが発生。大会メカニックはコースにいたそうですが、うまく捕まらず、そのまま。
何と、残り120kmあまりをずっと一番重いギアで走り切ったそうです。
マ、マジか・・・。
アイアンマン北海道は、世界で3番目にバイクコースのアップダウンが激しいとされているコースです。そのコースを120km一番重いギアで・・・。
想像しただけで脚が砕けそうです。
高柳さん:
「パンクや機材トラブルが起こらない前提で走っていたので、修理道具持ってなかったから焦った。てか壊れても修理の仕方が分からないわ(笑)」
oh・・・。色んな意味で凄い。
トレーニングを積んだアイアンマン出場者からしたら
「お前らそんなんで大丈夫か・・・?」
とツッコまれる事間違いなしの状態だったそう。
マジで死ぬ
齊藤さん:
「水泳とバイクは平静を保つことができましたが、ランに入った瞬間(これは死ぬ・・・)と思いました。脚が砕けそうで、胃もおかしかった。あまりにパニックになって、バイクのグローブつけたままランに入ってしまった(笑)」
あまりのパニックによりバイク→ランのトランジットだけはめっちゃ速かったそうです。
アイアンマンの魅力
そんなこんなで何とか16時間ほどかけて完走した彼ら4人。
走っている時の声援、ゴールした時の声援、感動、ヒーロになった瞬間は今でも忘れられない思い出となっているそう。
自分の限界を知って、突破することができた感動。
大会までのプロセス、目標を立てて、それをクリアしていく充実感。
その全てが彼らをアイアンマンに導いてくれたそう。
普通の社会人でもアイアンマンになれた!
という自信は今も彼らの日常を大いに支えているのです。
齊藤さん:
「アイアンマン完走して、何でもできる!と思えるようになった。アイアンマンの後、フルコミッションの仕事に転職しました(笑」
おぉ。
高校生の時の夢は現実となった
目標達成意欲という点で、本当にすごかったのは、消防士の中村さん。
高校3年生の時の夢は
「消防士になってトライアスロンの大会に出る!」
だったそうです。
そして現在、消防士としてトライアスロンの最高峰であるアイアンマンに見事なる事ができたという現実。
その目標達成意欲に感激。
出てる人は輝いている
彼ら4人が口をそろえて言っていたのは
「アイアンマンに出ている人はとにかく輝いている。そこには負のオーラは一切なく、出場選手も応援者も一体となってキラキラして、見ているこっちが元気になってくる。」
という事。
スポーツにおいても、仕事においても重要な「継続して目標を達成する力」。彼らの前身からあふれ出るオーラから、その真意を感じ取ることができました。
過去の積み重ねがアイアンマンを生み出す
彼らとの2時間あまりの談笑はとても充実した時間となりました。
後編で紹介しますが、彼らがアイアンマンで使ったロードバイクはトライアスロン用のバイクではなく、ホイールやコンポなどの機材も本当に「普通の」ロードバイクです。
そして私が最も印象に残った彼らの言葉は
「いやぁ、俺らはエンジンで勝負するんで!」
という言葉。
以前、コチラの記事でも書いたように、ロードバイクはじめ、機材スポーツで最も大事で投資効果が高いのは100万円の部品ではなく、エンジン(=乗り手自身)であるという事。 その答えを体現してくれていたのは彼らでした。
彼らは半ば冗談交じりに「ノリで出場した」「まともなトレーニングなんてしてないよ(笑)」と言ったりするのですが、そこには確かな自信と精神力、経験の積み重ねを私は感じることができました。
彼ら「普通の」人たちが見せてくれた「鉄人の」エンジンと精神力。
限界を決めるのも、限界を突破するのも、最後は結局自分次第。
その鉄人精神は突然宿るものではなく、過去の行動の積み重ねの結果でしか得る事はできません。
やる人はやるし、やらない人はやらない。
どんなに人から尻を叩かれても、人から「頑張ろう!」と言われても、「頑張る行動を取るかどうか」の最終的な判断の分かれ道はあなた自身の中にしかない。どんなに外的要因に責任転嫁しようとも、「やる」「やらない」を自ら選択して行動した先の結果と責任は、自分自身の中にあるのです。
ロードバイクでも、アイアンマンでも、どんなスポーツでも、ビジネスでも、日常生活でも、ほぼ全ての事に共通する真理です。
思考が言葉を変え
言葉が行動を変え
行動が習慣を変え
習慣が性格を変え
性格が運命を変える
この事を身をもって証明してくれた4人には只々感服するばかりです。
自分はまだまだ
最後はやや精神論っぽくなってしまいましたが、彼らの話は私のような軟弱サイクリストにとってはとても刺激的で「自分はまだまだだなぁ」と実感し、これからのトレーニングに向けてモチベーションを上げるきっかけを与えてくれました。
次回、【後半】ではロードバイクサイトらしく、自転車に焦点を当てて、彼ら4人のロードバイクや機材について見ていきたいと思います。
果たしてどんなロードバイクに乗っているのでしょうか!こうご期待。
そして私もいずれはトライアスロンに挑戦を・・・。まずは死なないようにショートコースから始めなければ。。。
その選択と行動と結果も、最後に決定するのは誰でもない、私自身なのです。
2017/5/17記事追加
アイアンマン完走者に学ぶアスリートの神髄【後編:機材】はコチラ
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