ロードバイクのポジション、姿勢については様々な議論があり、シチュエーションや人によっても最適解が異なります。
背中は丸めたほうがいいとか、骨盤は寝かせた方がいいとか、立てた方がいいとか、ヒルクライムでは成るべく胸を広げた方がいいとか・・・。この辺の話を始めると中々まとめきれないのですが、今回一つだけ姿勢に関して私からも強く推したいのが「肩甲骨は適切に開いたほうがよい」ということです。
呼吸が苦しい原因は肩甲骨?
甲骨を開いたほうがよい、というのは「空気抵抗が~」とか「ペダリングが~」という話ではなく、より楽で適切な呼吸を行うためです。より多くの酸素を取り入れ、より多くの二酸化炭素を排出することで、結果的に筋力やパワーを維持しやすくなります。
そもそもロードバイクの姿勢は呼吸がしにくい
まず前提として、ロードバイクのような前傾姿勢は、直立している時よりも呼吸しにくい状態となっています。
では呼吸しにくい状態とは?
「呼吸しにくい状態」の定義とは「横隔膜が動く範囲が狭くなる」です。
そもそも人間の肺は自分で動くことができない臓器です。心臓や脚は自身の筋肉が動いてくれますが、肺は肺自体が伸縮しているのではなく、横隔膜や周りの筋肉が肺を動かすことで機能しています。そして取り込まれた酸素は肺の中にある肺胞によって血液に届けられ、同時に二酸化炭素を外に出します。酸素は圧力が高い所(肺)から低い所へ流(血液)れこんでいきます。この圧力差が多きければ大きい程、酸素は血中に流れ込みやすくなります。
特に重要なのは「酸素を取り込む」ことよりも「二酸化炭素を排出すること」です。人間が息苦しくなるのは、酸素が足りなくなることより、二酸化炭素を排出できない事によるからです。
そしてポイントとなるのはこの横隔膜などによる肺の稼働範囲です。
ロードバイクのような前傾姿勢を取ると、直立時に比べて横隔膜の上下可動範囲が狭くなり、肺が動く範囲も狭くなります。
ヒルクライムなど、空気抵抗が大きく影響しない場面で、極端な前傾姿勢を避け、上体を起こし気味にした方がいいと言われるの、より横隔膜の可動範囲を広げるためです。
※ただし、これには諸説あり、必ずしもこれが正解とは限りません。上体を起こすと胸式呼吸になりやすく、余計に呼吸効率が悪いとされる説もあります。・・・正直この辺の正解は分かりません。
肩甲骨を広げることで息を通りやすく
直立時であっても背中を丸めた状態であっても、共通して言えることは「肩甲骨を開いたほうが呼吸がしやすい」ということです。肩甲骨を開いたほうが、横隔膜含め、肺を覆っている筋肉の可動範囲が広くなります。また肩甲骨を広げると同時に、胸も開くため、肺自体の伸縮範囲も広くなります。
肩を丸めすぎ注意。肩甲骨を開くとは?
肩甲骨が開いた状態とはどのような状態か?
肩甲骨が開くと見た目は盛り上がったようになります。説明が非常に難しいのですが、私の稚拙な絵で雰囲気を感じとって頂ければと思います(笑)
イメージとしては骨盤を倒し気味にして、背中は丸め過ぎず、両肩の端を水平よりやや下にする感じ。(うーん、分かりにくい。。。)
ロードバイクのポジションや姿勢を考える時、横からみた背中の丸め具合やハンドルの位置は皆さん気にしますが、正面、あるいは背面から見た背中の丸まり具合や肩甲骨の位置は意外と見落としがちです。
ここで注意しないといけないのが、「肩甲骨を開く」事と、「肩を落として背中を丸める」事は違うということです。肩甲骨を開く場合に、あまり背中を丸め過ぎるとうまく開いてくれません。理想としては「骨盤を寝かせて背中を伸ばして乗る」姿勢が見られる新城幸也選手の通常ポジションでしょうか。ただし、骨盤を寝かせると、背中を反りやすくなってしまうので、これまた注意。バランスが難しいですね。。。
↓の写真は2015年ツール・ド・フランス さいたまクリテリウムに出場していた新城選手。何とか写真に収めた(笑)
新城選手の身長は170cmと日本人男性の平均身長に近いので、参考になります。写真はブレていますが、肩甲骨辺りが少し隆起しているのが分かります。
逆に背中を丸めると同時に肩を落とし過ぎると、肩甲骨は下に下がり、狭くなり、肺を圧迫する結果となります。よく見かけるのは背中を丸めて肩を落としすぎている姿勢です。タイムトライアルや距離の短いレースであれば極端に身体を小さく丸めて空気抵抗を極限まで減らす場合もありますが、この姿勢はあまり長続きしません。どうしても肺が圧迫さて、肺の伸縮範囲が狭くなり、取り入れる酸素と、吐き出すべき二酸化炭素の量が少なくなってしまうからです。
呼吸が苦しい時は肩甲骨を意識する
「レース中に呼吸が苦しくなる」「すぐに息が上がる」と感じている人は、心肺機能を向上する筋トレに励むより、まず肩甲骨の位置を意識してみることをおすすめします。
- 肩を落として丸まり過ぎていないか?
- 上体が狭くなり肺を圧迫していないか?
- 肩甲骨を開くことを意識しているか?
肩を落として肩甲骨が閉じた状態と、肩甲骨が開いた状態で呼吸をしてみると、呼吸のしやすさの違いが明らかに体感できます。
ただ、先述したように、タイムトライアルや空気抵抗を極端に減らしたい場合やスプリントなど、状況によってロードバイクに乗る姿勢の最適解は変化しますし、人によっても適切なポジション、姿勢はそれぞれ違います。
今回は一つの参考例ですが、いつものトレーニングやレースの際に「呼吸が苦しい」「すぐ息が上がる」で悩んでいる人は、一つの手段として「肩甲骨を開く」を意識して実践してみてはいかがでしょうか。自分に合った最適ポジションの一つの解に繋がる可能性が高いです。
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