先日購入したヴィプロス社のロードバイク向けチェーンオイル3兄弟「ムオン」「ケイテン」「ブルーノ」。
まずは一番最初に発売された「ムオン」のレビュー・インプレです。
走行条件
走行時の条件は3種類とも同じ条件で走行しています。
- タイヤ:コンチネンタルグランプリ5000
- 空気圧:7.0bar
- ホイール:ボーラウルトラ50
- チューブ:ヴィットリアブチルチューブ
今回ムオンを使用した走行距離は70kmほどです。
ムオンの特徴・スペック確認
ここで改めてヴィプロス「ムオン」の特徴とスペックを確認してみましょう。
購入価格:1500円(税抜)
成分:化学合成潤滑基油、特殊潤滑添加剤(FM剤)、防錆添加剤
ここでいうFM剤とは摩擦調整剤:friction modifier(フリクションモディファイヤー)の略で摩擦抵抗を減らす役割を果たします。一般的にチェーンオイルの添加剤としては「極圧剤」が知られていますが、極厚剤は「EP剤」と呼ばれておりAZオイル BIc-007 BANKに多く使われている添加剤とは異なります。
特徴としては極圧剤(EP剤)の方が金属摩擦に対する反応が早く、高負荷(高速域)になると、オイルの結合をわざと切り離して潤滑をさせようとするのに対し、FM剤は高負荷においても粘り強く結合を保つようなイメージ。FM剤は油性向上剤とも呼ばれ、粘性が高く、金属表面の膜を保つのが特徴的です。
公式の説明では「特殊添加剤を50%と高い割合で配合」とありますが、この成分表記には特殊添加剤(FM剤)とあります。この特殊添加剤50%=FM剤50%という意味ならば、かなり高い割合でこのFM剤が使用されているのがムオンのキモ。
それにより高負荷においてもFM剤による被膜でチェーンの摩擦と音鳴りを極限まで減らしているオイルです。
ちなみに防錆添加剤は5%ほど入っているそうです。
1コマ1滴で十分
これはムオンに限らず他のオイルにも言えることですが、基本的にチェーン1コマに対し1滴のオイルで十分です。
ムオンの注ぎ口ノズルは一般的な太さ。AZオイルの細身のノズルに慣れていた私は最初どうしても少し垂らしにくさを覚えてしまいましたが、1コマずつ塗るには特に問題ない細さです。
ムオンは粘性が比較的高めのオイルのため、1コマ塗ってすぐに垂れてくるということはありません。
ただ、それでも何回かチェーンを回して、チェーンの側面についた余分なオイルは拭き取るくらいの量で充分に効果を発揮します。
ムオンは塗布直後からの極めて薄い皮膜の形成するのが特徴で、およそ5分くらい経てばチェーンのコマ全体に浸透してくれるので、「寝かせる」必要なく走り出すことができます。
↓塗布直後のチェーンの様子↓
すぐに浸透しました。
流石の無音
まず驚いたのはその静音性。
走り出した直後からチェーンの静かさには驚かされました。
商品名に「ムオン」と付けるだけあり、本当に無音。
チェーンの音鳴りは皆無です。マジで。
聞こえるのはタイヤと路面が摩擦する音だけ。
凹凸のない舗装されたアスファルトであれば、タイヤと路面の摩擦音も少ないので、ほぼ自転車が走ってる音が聞こえないんじゃないかレベルで静かです。
これは流石。
高速域ではやや引っ張り感が・・・
もちろんそれなりにお値段のするオイルなので、基本的な潤滑性能はかなり高いレベルです。
ただ、ムオンの特徴としてはやはり被膜によって摩耗を低減させるオイルで、粘性はやや高めなので、極圧剤の配合率を高めたAZのBIc-007と比べると高速域での潤滑性能はどうしても劣ってしまう感覚が否めません。
感覚的には時速35kmを超えると、どうしてもチェーン間の被膜によって引っ張られている感じ。だいぶヌルヌル系の潤滑。
チェーンの音が小さくなることと、高速域でも超潤滑するかどうかは必ずしもイコールではありません。
しかし、これは「ムオンが劣る」という意味ではなく、オイルの特性なのである意味うまくムオンの特性が発揮されている事にもなります。
AZのBIc-007 BANKはそれこそレースなどにはもってこいですが、耐久性の低さから常用したりロングライドに向いているオイルとは言えませんが、ムオンはその逆。MF剤を活用した被膜により耐久性は高く、オイルの持ちもよいです。ヴィプロス社の公式HPによると、雨まじりの状況でも450km~500km程度は油膜切れを起こさないとの事。実際70km程度では全く性能の低下を感じることはありませんでした。その高い皮膜保持性能は結果的にチェーンの寿命を延ばすことにも寄与しています。
チェーン汚れはどうか?
巷では「結構汚れる」との評価もありますが、個人的にはそんなに「汚れた」という印象はありませんでした。
↓ムオンで70km走ったチェーンの様子↓
まぁ、確かにシャバシャバ系のオイルと比べるとゴミを巻き込みやすですが、全然許容範囲じゃないでしょうか。ワコーズのチェーンルブの激汚れに比べればかなりマシ。
AZのBIc-007 BANKはめちゃめちゃ汚れるので論外ですが、同じくらいの粘性であるAZのBIc004ロードレースSPよりも更に汚れにくいです。
ただ、チェーンリングの周り結構垂れてました。だいぶ最初に拭き取ったつもりだったのですが、もう少し拭き取ってよかったかも。
オイルの飛散具合は?
AZのBIc-007 BANKなどの粘性が低いシャバシャバ系オイルは飛散が激しくすぐにホイールのリムが飛び散ったオイルにより汚れてしまいますが、ムオンに関してはあまり汚れることなく済みました。
私の場合、BORAの白いデカール部分に付着したオイルの量で飛散具合が分かります。。。
↓ムオンで70km走った後の飛散具合↓
ちなみに下の画像はAZのBIc-007 BANKで20kmしか走ってない時のオイルの飛散具合(ひどい)。
メンテナンスは楽です
ということで、ムオンのメンテナンス性は良いです。
400kmくらいは持つことからオイルの塗り直しも少ないですし、オイルを落とす際もチェーンクリーナーでよく落ちてくれます。
常用~ロングライドでもおすすめオイル
結果的にムオンのおすすめ用途としては、普段使いからロングライドでしょう。
時速35km、40km以上の高速域でない限り十分な潤滑性能を発揮しますし、何より、乗り心地は最高に気持ちいいです。チェーン音は本当に皆無になり、ペダルがヌルヌル回る感覚になるので、ロングライドでもストレスなくペダルを回し続けることができるでしょう。何より耐久性が高く、被膜が切れにくい事がチェーン寿命を延ばす上でかなり有難いです。
このおすすめ用途というのも、どれか用途を選ぶとしたら・・・というくらいの意味合いで、潤滑性能自体もかなり高い次元です。距離100km未満で高速域でのレースであれば、純粋な潤滑性能はAZのBIc-007 BANKの方が勝る、といった比較対象なので、ムオンであってももちろんレースでも問題なく使用できると思います。
どちらかというとAZのBIc004ロードレースSPに近い感じ。
同じウェット系でもフィニッシュラインのウェットルブよりも耐久性・潤滑性においてはムオンの方が圧倒的に上です。まぁ、そりゃ同じ60mlでもムオンの方が3倍くらい高価なので、そこは値段相応ですね。むしろそうじゃないと困る・・・。
以上、ヴィプロス社のムオンのレビューでした。
次回は更に進化したヴィプロスの「ケイテン」をレビュー致します。
最新情報をお届けします